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【腰痛検診】「痩せろ」って怒られるから病院には行きたくない介護士

🕒 2024年2月22日  🗒️【コラム】 

【腰痛検診】「痩せろ」って怒られるから病院には行きたくない介護士

先日、介護施設職員を対象に約80名の腰痛検診を行いました。腰痛のリスクを伴う職業に従事する労働者は半年に一度、特定健診という形で腰痛検診が義務づけられています続きを読む・・・

先日、介護施設職員を対象に約80名の腰痛検診を行いました。腰痛のリスクを伴う職業に従事する労働者は半年に一度、特定健診という形で腰痛検診が義務づけられています。検診では一般的に受診者数が多いので手際よく判断していかないといけないのですが、とはいえ、小さな声を逃しては検診の意味がありません。目と耳を研ぎ澄まし1人ひとりへ対応します。すると、ある職員が言いにくいことを教えてくれました。打ち明けてくれた腰痛と肥満への偏見の誤解を解きたくて今回は私見をコラムにしました。

ぎっくり腰の既往がある人数に多さに驚愕

厚生労働省が発刊する腰痛予防指針(別添え)は、重量物を取り扱う作業、特に介護作業等に焦点を当てています。腰部に著しい負担のかかる労働者のために、腰痛の健康診断を半年に一度の義務にしました。検診結果を施設産業医が確認し事情者と共に労働者の健康を守るためです。作業方法の見直しや就労時間の調整、時に配置換え等が行われます。特に介護職は「ぎっくり腰」をきたす割合が非常に高い職種で、繰り返す腰痛は特に要注意です。一般労働者であっても腰痛は約62%の発生頻度ですが、介護士は約85%と約20%も高くなることが分かっています。今回の検診でも同様の印象でした。

引用元:厚生労働省「令和元年業務上疾病発生状況等調査」

根絶が難しい国民病の代表選手が「腰痛」

そもそも腰痛は国民が抱える身体の痛み不調の第1位、2位を毎年獲得している国民病の1つです。なぜ根絶が難しいかというと、なにか1つ「これのせい」と原因特定がしにくいからです。痛みの発生の仕方1つとっても、「動かす」と痛みが出る人と、「じっとしている」と痛んでくる方がいます。全く逆ですよね。要因を突き止めようと、「どんな作業?何時間?普段のストレスは?、睡眠は?運動習慣は?喫煙は?・・・」と質問はキリがありません。それほどまでに、動作的要因、環境要因、個人的要因のほか、心理・社会的要因などが絡み合い複雑です。

肥満=腰痛、腰痛=肥満とは言えない

上記では、「『Aの原因はB』だからBを治せばAがなくなる」と一辺倒にいかないのが腰痛の難しさと言いました。検診時にしびれの症状が出てしまっている介護士さんがいらっしゃいました。「病院を一度受診されませんか?」と伝えると、絶対イヤだと表情で訴えながら「『痩せろ』」って怒られるから絶対病院には行きたくない」とおっしゃいました。過去にそういったご経験がおありなのかなと思いました。「怖がらせるためでなくて、あなたの関節を守りたいから」と、関節ラブを伝えると、最終的に拒絶反応は和らいだように見えました。

「痩せろ」って怒られるから病院には行きたくない介護士

引用元:医療情報専門サイトCareNet医療ニュ−ス(2019年5月13日付)

博士号論文に「高度肥満者の骨格筋量」を研究した原著論文があります。ここまでコラムを読んでいただいた方には、「腰痛の原因は肥満」と言い切れないため、痩せろと怒って、もし本当に痩せたとしても腰痛が治るとは限らないことがすでに理解いただけていると思います。万が一、無理な減量を試みて、腰背部を守る筋肉が落ちてしまうと本末転倒です。別の腰痛のリスクが高くなってきます。他にも肥満は心臓にも悪いからとか、あの手この手で恐怖心で動かそうとしてもやはり、様々な理由から無理な減量はオススメしません。

※原著論文の「原著」とは私が研究の責任者で論文の作者ですよ、の意味です

筋肉を味方につける

論文の最後は、「肥満であっも筋肉量を維持増加させることで、インスリン抵抗性と呼ばれる身体への不具合が改善していくよ」と締めくくられました。つまり、「見た目の脂肪量を落とすため、恐怖やカツを入れて無理な減量を行い、必要な筋肉を無くして別の腰痛悪化のリスクに怯えるよりも今は慌てず、健康的に筋肉を動かして増やしていうね」「今からでも少しずつやっていこうね」が私からのメッセージになります。詳細は割愛しますが、筋肉を味方につけると、巡り巡って、脂肪燃やしてくれますよ。