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整体やカイロで体を整えたいと思っても、「本当に安全なの?」と不安になる方は少なくありません。臨床現場で実際に怪我の症例を担当してきた整形外科専門医として、注意すべきリスクや安全な施術の選び方について解説します。
「整体やカイロプラクティックを受けてもいいのでしょうか?」
実は整体・カイロプラクティックを含む治療院市場(柔道整復、鍼灸、マッサージなど)は、2023年時点で約9,850億円規模。厚生労働省統計によると、国家資格系の施術所だけで38,589件あり、さらに民間資格系を含めると都市部では主要通りに数十メートルごとに院が並ぶ地域も珍しくありません。
本当に身近な存在だからこそ、「受けても大丈夫?」というご質問をいただく機会が非常に多いのです。
私の答えはシンプルです。
「信頼できる、経験豊富な先生を見つけてください」
万が一不具合が出ても、あなたが後悔しない選択をしてください。なぜなら整体やカイロは医療行為ではなく「医業類似行為」に分類されます。医師とは資格や責任の範囲が異なるため、受ける際には「信頼できる、経験豊富な先生」を選ぶことがとても重要です。
50代男性が五十肩のため整体院に通っていたところ、力強い施術により骨折が発生しました。
私はその患者さんの手術を担当し、幸い回復は順調でしたが、その後訴訟に発展し「施術が強引であった」と認定されました。
このように、整体やカイロの施術によって事故や怪我が生じるケースは国民生活センターにも多数報告されています。この経験から、施術の安全性は「施術者の技量」と「適切な判断」に大きく左右されると実感しています。
代表的なリスクとしては、腰部や背部の施術による骨折、頚椎施術による神経・脊髄の損傷、施術後の腰痛悪化や痺れ、慢性的に続く痛みや障害などがあります。
特に「頚椎に対するスラスト法(急激に首をひねる手技)」については厚生労働省も危険性を指摘し、禁止対象としています。
これまでスポーツ医学や整形外科の分野で、数え切れないほど多様な治療家と出会いました。
皆さん日進月歩で研鑽を積まれています。誰もが「病める人をなくしたい」「救いたい」という熱い思いで活動しています。少なくとも私が出会った人たちの中で、患者さんに不具合が生じることを望む人はいませんでした。
それではなぜ、このようなトラブルケースが絶えないのでしょうか。
1つの背景に、日本国内で医療と施術の連携体制が十分でない点が挙げられます。
米国スタンフォード大学PM&Rスポーツ診療部での経験では、医師と治療家が検査結果を共有し、安全に施術を行う仕組みが整っていました。
しかし日本では、施術者個人の経験や判断に依存する傾向が強く、安心して医師と議論できる機会や場所がありません。
そういった治療家の孤独さが事故につながるのではないかと思います。
本来なら、海外のように医療類似行為と医療は連携しなければなりません。海外で暮らしてみて、これは連携なしに理想郷は実現できないと実感しました。
私は2004年からそれを望んでいます。しかし国内でのその兆しはまだありません。今後の可能性もまだ感じられない状況です。
スタンフォード大学PM&Rスポーツ診療部では、私の理想とする連携システムが「当たり前」に存在していました。連携とは具体的に、例えば整体や鍼灸が医師の指示箋に従って提供されることから始まります。各治療家は、検査結果に基づき安心して施術を提供できます。
そして定期的にフィードバックを互いに共有し、共に学び合う姿勢とその環境が必須です。
現在の日本国内で整体やカイロを受ける際は、信頼できる経験豊富な先生を選ぶこと、強い施術を希望しないこと、施術中や施術後に痛みや違和感を覚えたらすぐに中止することが大切です。
自分の体を容易に預けすぎないでください。もし預ける時は後悔がない相手に。
さらに、必要に応じて医師の診察と画像での検査(単純X線やCT、MRI)を受けることをおすすめします。
整体やカイロは効果を感じる方もいますが、リスクも存在します。
安全に活用するには、施術者選びと自己管理が欠かせません。自分の体を大切に扱い、正しい知識を持つことが健康を守る第一歩です。
少し難しい内容でしたが、このテーマを「我が事」として深く考えることは、自分自身の健康管理の一環として非常に有意義だと考えます。自己理解を深める上でも大いに価値があると感じています。
要は、「自分を大切に」ということでした。