ある経営者の方が、こう打ち明けてくださいました。

「重要な決裁を控えた朝、肩が回らないんです。気のせいだと思って、コーヒーを淹れて、椅子に座り直す。集中しようとして、また座り直す。30分のうちに、3回も座り直している自分に気づいたとき、ぞっとしました。」

その方は決して怠けているわけでも、加齢に負けているわけでもありません。年商数十億円の事業を率い、毎日のように難しい判断を重ねている、現役のトップ経営者です。

「判断力は落ちていない、と思いたい。でも、なんとなく以前と違う。集中が続かない。夜になると、頭は冴えているのに、身体だけが先に降参している感じがする。」

あなたは、その違和感を「どこに」相談しますか

肩が回らない。膝が一瞬軋む。座っていると腰が重くなる。集中が途切れる時間が、以前より早く来る。

こうした違和感を抱えたとき、私たちは「どの専門家に相談すべきか」で迷います。

整形外科に行けば、レントゲンを撮ってもらえます。骨に異常がなければ「様子を見ましょう」と言われます。

接骨院やマッサージに行けば、その場では楽になります。けれど、1週間後には同じ場所が同じように張っている。

パーソナルトレーナーに相談すれば、筋力トレーニングを提案されます。やってみると、確かに身体は動くようになる。でも、判断を控えた朝の「肩の重さ」が消えるかというと、そうでもない。

ジムやヨガに通えば、リフレッシュにはなります。けれど、月曜の朝、また同じ違和感が戻ってくる。

どれも正解で、どれも何かが足りない。この「どれも足りない感じ」の正体は、実は日本の医療の構造的な穴に由来しています。

日本の医療には、ひとつの大きな空白がある

日本の医療は、世界的に見ても非常に高い水準にあります。手術の精度、薬の品質、検査の精密さ——どれも一級です。

ただ、ひとつだけ、欠けているものがあります。

それは「骨・関節・筋肉・神経・運動・回復、これら全部を一人の医師が一つのつながった身体として診る専門領域」です。

日本では、骨は整形外科が診ます。リハビリは別の科に紹介されます。スポーツ選手はスポーツ医学の医師にかかります。日常の運動指導はトレーナーが担当します。それぞれの専門家は優秀です。けれど、それらをひとつの連続した身体として、一人の医師が責任を持って見渡す——その役割を担う診療科が、日本には存在しません。

経営者の朝の肩の重さは、骨の問題でしょうか。神経の問題でしょうか。筋肉でしょうか。睡眠でしょうか。前夜の判断の重さからくる蓄積でしょうか。

おそらく、そのすべてが少しずつ関わっています。だから、どれか一つの専門家を訪ねても、答えの半分しか得られないのです。

アメリカには、それが一つの科として存在する

アメリカには、私たちが「整形外科」「リハビリ科」「スポーツ医学」「運動生理学」とバラバラに認識しているものを、一つの専門医学として束ねた領域があります。

名前を Physical Medicine and Rehabilitation——略して PM&R(ピーエムアンドアール) といいます。直訳すれば「物理医学・リハビリテーション医学」です。

ここでいう「リハビリ」は、日本でイメージされる「ケガをした後の回復訓練」だけを指しているのではありません。身体機能そのものを医学的に診て、整えて、最大化するための領域全体を指します。手術前から、運動指導から、慢性的な違和感の評価から、年齢に応じた身体設計まで。それらを一人の専門医が、つながった一つの医学として担当するのです。

アメリカで重要な意思決定を担う経営者やエグゼクティブは、症状が出てから整形外科を探すのではなく、PM&Rの専門医に日常的に診てもらうという選択肢を持っています。何科に行けばよいか迷う必要がない。一人の医師が、身体全体を見渡してくれるからです。

日本には、この選択肢がありません。

だから、私は越境しました

私は整形外科専門医として、長く手術室に立ってきました。骨折を直し、関節を作り直し、術後の回復を見届ける——それは医師として誇りある仕事でした。

けれど、ある時期から気づいたのです。手術で骨を直しても、その後の身体が以前のように戻らない方が、思った以上に多い。あるいは、手術が必要になる前に、もっと早い段階で介入できていたら——と感じる場面も増えました。

その「間」をつなぐ医学が、日本にはない。

だから私は、Stanford大学病院のスポーツ医学研究医として、PM&R的な視点を学びに行きました。日本人として、唯一の研究医として。

そこで見たのは、骨も筋肉も神経も運動も、バラバラの専門領域ではなく、一人の身体としてつながったものとして診る医療の姿でした。経営者やプロアスリート、軍人や高齢者——立場の違う人々が、同じ専門医のもとで、自分の身体を「全体」として診てもらっていました。

帰国してから、私はこの視点を日本でどう提供するか、ずっと考えてきました。日本には受け皿となる診療科がない。だからクリニックという形で、PM&R的な視点を一人ひとりの方にお届けする場所を作ることにしたのです。

経営者にとって、身体は「最終決算書」です

経営者の方は、決算書を読み込みます。売上、利益、キャッシュフロー、固定資産。数字の背後にある事業の実態を、紙の上で見極めます。

けれど、その判断を行う「自分の身体」については、決算書を持っていません。

肩の重さ、集中の途切れ、座り直しの回数——それらは身体が出している「身体決算書の数字」です。読み解いてくれる専門家がいなければ、数字は数字のまま積み上がります。そして、ある日、大きな判断を控えた朝に、初めて違和感として顔を出します。

経営者にとって、身体は最終的な意思決定の質を支える資本そのものです。次の10年、次の重要な決断、次の事業展開——そのすべてが、身体の状態に支えられています。

「身体を整える」ではなく「判断力を支える土台としての身体を、医師の目で診てもらう」。これが、PM&R的な視点が経営者にとって意味することです。

上塗りではなく、根本からアプローチする

やえこふクリニックでは、対症療法的な「楽になる施術」は行いません。

その代わりに、医師として、整形外科専門医として、Stanford大学病院のPM&R研究医経験を持つ医師として——あなたの身体を一つのつながった全体として診ます。

肩の重さがどこから来ているのか。集中の途切れの背景に、どんな身体の積み重ねがあるのか。次の10年、判断力を支え続けるために、今、どこに介入すべきか。

これは診療行為ではありません。PM&R医としての知見をもとに、あなたの身体を読み解き、これからの方向性を一緒に考えるための時間です。

「上塗りではなく、根本からアプローチする」——これは、PM&R的な視点を日本で提供する、当院の核心メッセージです。

ドクターコンサルのご案内

ドクターコンサル(¥88,000(税込)/90分・オンライン/Google Meet)では、Dr.EKO博士が直接、あなたの身体と現在の課題を一緒に見渡します。

「初めての方の単発相談」としても、「継続的にトレーニングを続けている方のスポット利用」としても、ご活用いただけます。

なお、ドクターコンサルは診療行為ではありません。PM&R医としての知見を活かした、ご自身の身体と判断力を支える土台についての対話の時間です。

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